千尋くん、千尋くん
「ゲホッ……ち、千尋くん」
何となく分かってはいたけど、振り返るとそこに立っていたのは、相変わらず気だるそうな千尋くん。
中途半端にあがっている右手が、あたしの頭を襲撃した犯人である証拠だ。
「千尋く」
「まず、スカートが短い」
「……は、はい?」
「そして邪魔だ」
「あ、ごめんね……」
「ん、」
そう言うと、スムーズに下駄箱に靴をしまって教室へと行ってしまった千尋くん。
嵐のように現れて、嵐のように去っていった彼に、あたしはボーッと立ち尽くすしかなかった。
「あんたたち、本当に付き合ってる?」
「えーっと……あたしが聞きたい、です」
こんな感じに、学校での千尋くんのあたしの扱い方は、適当な上に雑だ。