千尋くん、千尋くん







「……千、尋くん」





くるりと振り向いた千尋くんの、真っ直ぐな瞳に見つめられて。




出そうになる涙をぐっとこらえる。





「あるみが泣く意味が分かんないんだけど」




「ま、まだ……泣いてないもん」




「でも、どうせ泣くんでしょ?」




「うっ……ぅぅ……ご、ごめんなさ、い」







千尋くんに言われた通り、こらえていた涙が一気に溢れて。





「泣いてもダメ」






心なしか、少し千尋くんが冷たい気がした。





< 236 / 397 >

この作品をシェア

pagetop