千尋くん、千尋くん
「あ……」
「どうしたの、あるみ?」
次の移動教室のために、科学室へ向かっていたあたしとヒメちゃん。
あれほど焼けるのを嫌がっていたヒメちゃんは、夏休みにはっちゃけすぎたらしく、結構な小麦色になっていた。
そんな彼女が、あたしの視線の先を辿っていく。
「……あれ、彼氏くんじゃないの?」
「う、うん……」
そこから見えたのは、3階の窓から遠くに見える、学校の裏庭の木陰。
ちょうどよく紅葉した楓の木の下に、制服姿の千尋くんが寝転がっていた。