千尋くん、千尋くん
「ふぅ。そろそろ、本題入ろっか」
笑った後に一息吐いた熾音さんは、優しいけどどこか真面目な表情であたしを見つめた。
それに対して、あたしもコクりと答える。
大丈夫。怖くないよ。
大きい手のひらであたしの髪を柔らかく撫でた熾音さんは、まるで妹をあやす本当のお兄ちゃんみたいだった。
うん。大丈夫。
ちゃんと聞こう。
怖くないんだ、逃げないんだ。
その理由はさっきしっかり確認した。
「話して、下さい」
ゆっくり熾音さんの顔を見上げたあたしは、静かにそう呟いた。