千尋くん、千尋くん
「えっ……! 梓さん赤ちゃんできたんですか!?」
「うん。あれ……今そう言ったつもりだったんだけど。すっごい時間差のリアクションだね」
「わー、おめでとうございます!」
「……うん、ありがとう」
「………?」
あたしと梓さんとは、直接仲が良いわけでもないし。
あっちがあたしのことを覚えているのかさえ、曖昧だ。
だけど、ただ熾音さんの口から出たそれは単純に嬉しくて、きっと熾音さんだって喜ばしいことだと思う。
なのに、喜ぶあたしにお礼を言った熾音さんは、なんだか辛そうに笑っていた。