千尋くん、千尋くん






「嬉しく、ないんですか……?」



「ん? 嬉しいよ。すっごく、嬉しい。俺、梓のことすっげー好きだし。いつかはちゃんと結婚するつもりだったし」





「じゃあ、なんで……」





「梓さ、喘息持ちなんだ」





喘息っていえば、発作性の呼吸困難を起こしたりする病気って、いつだかテレビで見たことがある。





「ついでに言うともともと身体が弱いほうでさ、たまに貧血起こすこともある」






前に初めて梓さんに逢ったときは、普通に元気っぽかったし、身体が悪そうには見えなかったけど……そういえば、少し肌が青白い印象だったかな。





「……だ、大丈夫、なんですか?」




「うん。ほんのたまに悪くなるくらいで、生活に支障とかはないから」




「そ、そっか……良かった」






ホッと胸を撫で下ろすと、隣の熾音さんがまた辛そうな表情を浮かべた。







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