千尋くん、千尋くん







「本当に、あるみちゃんっていい子なんだよね……」




「え……?」




「いっそのこともっと嫌な子だったら、思い切り突き放せたのにな」




「熾音さん、どういう意味……ですか?」






眉尻を下げて苦笑する熾音さんは、また続きを話し始める。






「本当はもう少し先のつもりだったんだけど。子供ができた以上、責任を持って梓と結婚する。その覚悟はちゃんとしてる」




「………」





「それでね。言った通り、梓は身体があんまり良くないし、これを機にもう少し環境の良い場所に引っ越そうと思ってる」





「空気のいい場所……とか?」





「うん。それと、少し遠い場所に梓の身体に合った病院があってさ。妊娠したこともあるし、やっぱり何かあったときに近くに安心できる病院があれば良いなっても思ってさ」






つまり熾音さんは、梓さんと、そのお腹にいる赤ちゃんと、ここから離れた場所に引っ越しを考えているということ。






じゃあ……千尋くんと、瑞穂くんは?






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