千尋くん、千尋くん
「千尋はもう高校生だし。俺が梓と引っ越した後もあの家に残って、独り暮らしでも大丈夫だろうって言うんだけどさ。瑞穂はまだ中学生だからさ……」
つまり、瑞穂くんだけ海外に……ってこと?
「だけどさ、千尋って俺ら兄弟の中で誰よりも大人なんだよな」
窓際に肘をついて、窓の外を眺める熾音さん。
確かに、千尋くんはすごく大人だとあたしも感じることがある。
「……アイツ、心配してんだ。今までずっとこっちで暮らしてた瑞穂が、親が一緒とはいえ、急にたった1人で海外に行ってやっていけんのかって」
「……千尋くん、らしいな」
「だろ。兄貴はこんなろくでなしだってのに、本当にアイツはいつも考えが大人なんだよ」
なんとなく、最近の千尋くんの言動がなんでだったのか分かってきて……。
話の先の予想ができてきて……。
息をするのが苦しくなってくる。
あれ、息って……どうやってするんだっけ。