千尋くん、千尋くん






────────────────




古典の授業中、窓の外を眺めながら今日初めて自分の思考を廻らせた。





隣の席では優等生の平沢さんが板書をせっせとノートに書き写していて、前の席では野球部の結城くんが丸い頭を伏せながら爆睡している。




かなりのベテランである古典のおじいちゃん先生は、何度も口癖の「えー……」を語中に挟みながら、ゆっくり教科書を読んでいた。






実にありふれた光景で。




いつもとなんら変わりない、当たり前の時間。







その中で、あたしはいつの間にかできていた飛行機雲が消えていくのを見ながら。





ひとつの決意をしようとしている。









< 275 / 397 >

この作品をシェア

pagetop