千尋くん、千尋くん
その後も、時々からかわれながら緩やかな時間が過ぎていく。
窓の外では、咲いたばかりのタンポポが揺れている。
きっと、この人は授業をサボりたくて。
だけど暇だからあたしを話し相手に誘ったのかな。
そう思いながら時計をチラリと見ると、授業終了まで後20分。
約30分もの間、この人のそばにいたらしい。
名前も知らない。
学年も知らない。
カッコいい彼。
「どう? そろそろ話す気になった?」
いきなりそう言った彼に、あたしは首を傾げた。