千尋くん、千尋くん
「また勝手にあたしの部屋に入ってきたの!?」
そう、問題はなぜ彼がここにいるかなのだ。
「勝手じゃないよ、あるみのお母さんにあげてもらった」
「なんですと……っ!」
お母さんめ……仮にも寝てる娘の部屋に、勝手に男の子を入れるなんて。
「で、でもっ、今日は遊ぶ約束してなかったじゃん……」
「約束しなきゃ、会いにきちゃダメなの? 俺はあるみに会いたかっただけなのに?」
「はぅっ……そ、そうじゃなくて」
「じゃあ、帰ろうかな」
めったに見ることなない、千尋くんのしょげた顔。
だ、騙されちゃダメだ。
これは演技なのだ。
だって、あの千尋くんがこんな顔をするわけないもん。
……とは、分かっているんだけど。