千尋くん、千尋くん






話すって……何を?





「最近、泣いてる?」



「………え?」



「渇いた瞳、してるよ」





真顔でそう言う彼に、考えてみる。








あたし……最近、泣いてない。









お父さんが死んだときも、身体が壊れ始めて、苦しいときも。




これからどうしたらいいのか、検討すらつかない、不安定な今も。





泣いたら、誰かに心配をかけるから。



泣いたら、誰かに迷惑をかけるから。





そう思い続けることで、あたしは頼り方だけでなく、泣き方までも忘れてしまったのだ。






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