千尋くん、千尋くん
「もう、はなし、て……っ」
「やだ」
「は、鼻水ついちゃうっ……」
「いいよ、ちゃんと除菌するから」
「しっ、失礼な……! 除菌って、あっ、あたし別に菌は持ってないもん……っ」
しばらくして涙が引いてきた頃、離してもらおうと彼の胸板を押した。
だけど、相手さんは全然離そうとはしなくて。
「また、迷惑かかるって思ってる?」
「………っ」
痛いところをつかれて、胸板を押す手から力が抜ける。