千尋くん、千尋くん






たったさっき。




初めて会った彼なのに、どうしてこうも見透かされているんだろう。






きっと、泣き痕ですごいことになっているだろう顔を上げて彼を見ると。



まっすぐあたしを見ているその綺麗な瞳に。





あぁ、敵わない……とひそかに思った。







「迷惑なんて、誰も思んないよ」



「……嘘だ」




「嘘じゃない」




「……嘘だもん」






「宇治橋千尋」




「………え?」




「俺の名前」





宇治橋……くん?



何でいきなり名前なんか……。






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