千尋くん、千尋くん
黙ったままの千尋くんに首を傾げると、千尋くんの細くて長い指が、あたしの腕をキュッと掴む。
「っひゃぁ……!」
「冷た」
いきなりのことであたしは情けない声を上げるが、お構い無し。
当たり前の感想を述べた千尋くんは、そのまま手を滑らせてあたしの手を握った。
「暖かい?」
「……うん」
この格好のせいですっかり冷えきったあたしにとって、千尋くんの体温はとっても心地よかった。
「そ」
言葉はそっけないけど、そう言って微笑んだ千尋くんの表情は、あたしの大好きな優しい笑顔。
キュン……。
胸の奧がじんわり暖かくなった。