千尋くん、千尋くん
夕日が沈みはじめた、オレンジ色の教室。
逆光になって、窓側にいるあたしの表情は、きっと彼からはよく見えない。
「……あるみ?」
「なに、千尋くん」
泣いちゃいけない。
声を震わせる素振りさえ、見せちゃいけない。
大丈夫、千尋くんと出逢う前はいつも強がって生きてきたんだもん。
それくらい、簡単。
「何かあったの?」
「別に?」
ううん、本当は色々あった。
このバカな頭でいっぱい考えた。