千尋くん、千尋くん
「また瑞穂か誰かに変なこと吹き込まれた?」
「ううん、最近は瑞穂くんにも熾音さんにも会ってないし」
「バカなこと考えてるんだったら、ちゃんと俺に話してよ」
「バカなことなんて考えてないよ。千尋くんに話すことも……何もない」
夕日に照らされて見える千尋くんの表情は、いつもと変わらない無表情で。
本当は別れたくなんてないんだよ。と、今すぐにしゃべってしまいそうな口を、一生懸命紡ぐ。
そして、あたしはこれから彼を精一杯傷付ける。