千尋くん、千尋くん







「………返す、から」




ギュッと手が震えないように握りしめて、目の前の千尋くんに差し出す。






だけど、千尋くんはなかなかそれを受け取ってはくれない。








もう、後戻りはできないんだ。





だったら………。












「……返すって、言ってるじゃん」








とことん、最低な女になろう。



そのほうが、千尋くんだって吹っ切りやすい。









スッと力を抜いた手のひらから。





キラリとピンク色の石を光らせたネックレスが、ゆっくり落ちていく。







チャリっと音をたてたソレは。






ゆっくりと千尋くんの足元に落ちた。






< 320 / 397 >

この作品をシェア

pagetop