千尋くん、千尋くん
「………返す、から」
ギュッと手が震えないように握りしめて、目の前の千尋くんに差し出す。
だけど、千尋くんはなかなかそれを受け取ってはくれない。
もう、後戻りはできないんだ。
だったら………。
「……返すって、言ってるじゃん」
とことん、最低な女になろう。
そのほうが、千尋くんだって吹っ切りやすい。
スッと力を抜いた手のひらから。
キラリとピンク色の石を光らせたネックレスが、ゆっくり落ちていく。
チャリっと音をたてたソレは。
ゆっくりと千尋くんの足元に落ちた。