千尋くん、千尋くん
「あたし少しそのへん散歩してくるから。まずは2人で話つけていいわよ」
「ご、ごめん。ヒメちゃん、ありがとう」
気をつかってそう言ってくれたヒメちゃんに、両手を合わせてお礼を言うと。
相変わらず化粧の濃い顔を横に揺らしたヒメちゃんは、そのまま後ろを向いて玄関から出ていった。
そして、静かな玄関に残るあたしと千尋くんの弟、瑞穂くん。
「とりあえず……中、どうぞ」
「………おじゃまします」
心なしか、むすっとしている瑞穂くんを、話しやすいようにリビングへと通した。
今は仕事でお母さんはいなく、リビングにはあたしと瑞穂くんの2人きりだ。