千尋くん、千尋くん

｢………バカだよ。聞いたでしょ、千尋くんから。初めて出来た彼氏に浮かれて……だけど、冷めちゃったら後は相手を傷付けることしか知らない、バカな女だって｣




｢ちげぇよ。わかんねーと思ってんの？　こちとらあるみが何を考えて、兄ちゃんと別れたかなんて、分かりきってんだよ｣




｢な、なに……それ。あたしはただ千尋くんに冷めただけだよ｣




｢嘘、つくなよ｣





眉間にしわのよった瑞穂くんと、チラリと目があった。




やっぱり、その顔は千尋くんとそっくりだけど……千尋くんはそんな表情しないかな。






｢嘘じゃないよ。それ以外の理由なんて……ない｣




｢兄貴(熾音)から聞いたんだろ。海外のこと……｣




｢……聞いたよ。聞いたけど、それとこれとは別の話だもん｣





｢俺、分かってたよ。もしこの話をあるみが聞いたらどうするのか。きっと、兄貴もそれを分かっててあるみに話したんだと思うし……。それで結果、こうなった｣







すでに、瑞穂くんには見透かされてしまっている。



あたしが千尋くんと別れた理由を。



だったら……もう、隠しても意味はないよね。