千尋くん、千尋くん
「あるみ、そりゃ俺、まだまだガキだよ。ガキだけど! あっち(海外)へ行くくらい、1人で全然平気だし。あるみに心配されるほどやわでもねぇ」
「そんなの、瑞穂くんの強がりだよ。誰だって、いきなり環境が変わったら戸惑うし、怖いと思う」
「だ、だからって、兄ちゃんが一緒に来たって何も変わんねーよ!」
「今はそう思っても、きっと近くに頼れる誰かがいたほうが、安心できるよ。あたしは瑞穂くんに、安心して楽しい毎日を過ごしてほしいもん」
少し興奮して声が大きくなる瑞穂くん。
だけど、あたしは落ち着いたまま答えていく。
「だからって……俺のために。俺なんかのために……なんで、あるみがそうやって傷付く必要があんだよ!」
「傷付く? 傷付いてるのは、あたしじゃない……。あたしは傷付いてるんじゃなくて、傷付けた側だから……」
「バカじゃんか。誰だって、分かるよ……あるみのそんな様子見たら。どんだけあるみが辛い思いしてんのかって」
瑞穂くんにそう言われて、ふと横の窓ガラスを見る。
確かに、そこに映ったあたしの姿は……醜く酷いものだった。