千尋くん、千尋くん
「なんで、さ。あるみは俺のためにそこまでするわけ……?」
子犬みたいな目をした瑞穂くんが、不思議そうにそう尋ねた。
あたしが、瑞穂くんにそこまでする理由。
そんなの……。
「大好きだからに、決まってんじゃん……」
これは、嘘偽りのない本心で。
正直迷ったよ。
熾音さんから話を聞いたとき。
あたしには千尋くんに瑞穂くんを捨ててもらうチャンスなんか、いっぱいあった。
いつもあたしをからかう瑞穂くんをかばう理由なんて、あたしにはないはずだった。
だけど、それが出来たのは。
「熾音さんがね、言ってくれたの。あたしのこと本当の妹みたいに可愛いって」
「兄貴、が?」