千尋くん、千尋くん
しばらくしてから、気を使ってくれていたヒメちゃんが外から戻ってきた。
まるで遊びに来たときみたいにおじゃましますと呟いて、あたしより先に階段を昇っていく。
「い、今あたしの部屋散らかってるよ……」
「いーのいーの。リビングじゃゆっくりできないもん」
「お茶は?」
「飲む飲む! 冷たいのね」
いつもどおり、遠慮がなく、自由気ままなヒメちゃん。
だけど、堅苦しい空気よりこっちのほうが断然楽かもしれない。
ため息と一緒に笑みをこぼしながら、ヒメちゃんのための冷たいお茶を淹れようと、リビングへ進んだ。