千尋くん、千尋くん







「聞かないの……?」



「何を?」



「千尋くんとのこと……もう、知ってるんでしょ」





あたしが恐る恐る聞くと、ヒメちゃんはテレビから視線を離さないまま口を開く。





「うん……学校では、結構噂になってたから。あるみが酷い振り方したって」





やっぱり。と思いながらも、あたしはまた尋ねる。




「そうだよ、あたし千尋くんにすごく酷いことした。……噂どおり。それに、親友のヒメちゃんにも何も相談しなかったよ。なのに、なのになんでいつもどおりにあたしに接するの? あたし、ヒメちゃんが思ってるより酷い子だよ」






俯きがちにそう言うと、上目で見えたヒメちゃんは持っていたお菓子を置いて、くるっと顔だけこっちに向けた。






「あんたさ、あたしにまで強がってどうすんのよ」





「………え」






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