千尋くん、千尋くん
「本当バカな子。分かってんの、あるみが理由もなしにそんなことする奴じゃないって」
「そ、そんなの分かんないじゃん……」
「分かるよ、あんたが思ってる倍はね。自意識過剰とでも思えばいい。だけど、本当にあたしはあんたが強がってることくらい分かってるから」
ヒメちゃんのバサバサのつけまつげの奥の奥の瞳は、真剣そのものだった。
「百や千の噂がどれだけあったって。あたしはたったひとつの今まで見てきたあるみを信じる」
「………」
「別に、何があったかなんて聞かないよ。あるみがなに考えてんのかなんて、聞かない」
「ヒメ、ちゃん……」
「たた、あんたが辛いときはさ……そばにいさせてよ。それくらいのワガママ、いいでしょ?」
優しくそう微笑んだヒメちゃんを見た瞬間、胸からすごく熱いものが込み上げてきた。