千尋くん、千尋くん
残り少ない準備期間で、その派手な見た目から無理矢理裏方役へ回されたヒメちゃんに手伝ってもらいながらも、必死で台詞を覚えた。
完璧とはいえないが、なんとかできることはやって、緊張しまくった本番当日。
しっかりと衣装も服飾科をとってる子たちに作ってもらって、舞台袖から出た瞬間。
よほどあたしたちの光景が異様だったのか、どっと会場が笑いで包まれた。
ただでさえ並み以上に緊張しているというのに、なぜ笑われたのかすぐに気づかなかったあたしは、一気にパニックに。
溢れないように頭に詰め込んだ台詞は、一瞬で頭から抜け落ちてしまい、どうすればいいのかさえ分からなくなった。
そんなあたしを見兼ねたヒメちゃんが舞台袖からカンペを出してくれたのだが、もはやパニック状態のあたしはただただそれを棒読み。
そしてのぶとい男の声で、女の台詞を喋る常磐津くん。
会場は終始、観客の笑い声で賑わっていた。