千尋くん、千尋くん




「なんか想像つかないけどさ、あたしたちってちゃんと大人に近づいてるのかね」



入学式が始まるということで、体育館に移動中。


ふと、独り言のようにヒメちゃんが呟いた。





「まだ進学か就職かも決まってないけどさ。場合によっちゃ、あと2年後にはあたしもあるみも普通に働いて、もしかしたら誰かと結婚して、家族ができて……そう遠い話じゃないんだよね」



「……そうだね」




そして、それは同時に。



こうして制服を着て、ヒメちゃんや他の友達と毎日のように顔を合わせたり騒いだりする学生生活が。



残りたったの2年しかないということも、表しているということで。





「本当に……あっという間なんだね」





廊下の窓から外を見上げたら、そこにあるのは重い雨雲だけだった。








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