千尋くん、千尋くん





「分かった?」



「う、うん……」





なんとか瑞穂くんに事情を説明してもらったところで、じゃあ入学式の時に呼ばれてた"宇治橋"は瑞穂くん? と聞くと、「当たり!!」と笑いながら答えた。





次々と驚く表情を見せるあたしに、瑞穂くんはおもしろそうに笑っている。








「元気、してた? あるみ」




「……うん」




「そっか」





その質問に、すぐにうんと答えられなかったのは。



やっぱり心のどこかでまだ彼の存在があったから。




彼のいない季節を過ごしてきたあたしは、お世辞にも元気とは言えない生活だったから。








「み、瑞穂くん……」




「ん?」







本当は瑞穂くんと会った瞬間、すぐにでも聞きたかった。



なぜ、彼がここにいるのかより……一番気になってた。




だけど、臆病なあたしはすぐには聞けなくて……。


















「……千尋くん………は?」

















かすれてしまうような小さな声で、首を傾げる瑞穂くんにそう問いかけた。









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