千尋くん、千尋くん
「だから、俺が日本に戻るっつったら、彼女のこと残していけないから兄ちゃんは残るって」
「瑞穂くん……」
「俺、言ったんだ。あるみのことはいいのかよって」
「瑞穂、くん……」
「だけど、説得できなくて」
「瑞穂くん…っ」
「…………あるみ」
話の途中で大声をあげたあたしに、瑞穂くんは驚いたように言葉を失った。
「もう、いいの……聞いてみただけだし。大丈夫、だから……」
「……………」
大丈夫、なんて言いながらもきっと声は震えていた。
だけどもう、聞きたくない……。
ううん、聞けない……。