千尋くん、千尋くん
千尋くん
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走った。
ただ走った。
瑞穂くんの言葉をしっかりと受け止めるのが嫌で、千尋くんの面影がある瑞穂くんを見ていることさえ辛くて。
千尋くんが、あたし以外の子を好きになってしまったのが思っていた以上に苦しすぎて。
もう、考えたくない……。
そう思いながらあたしは自分の教室につくと、机の上に置いてあった鞄を乱暴に持ち上げて、また生徒玄関までの距離を走る。
まだ昼前なのに、雨雲のせいでどんよりと暗い廊下。
まるで今のあたしのように、重たく薄黒い雲がザーザーと雨を落としている。