千尋くん、千尋くん
思い出であるネックレスも無理矢理千尋くんに返した今。
そんなこと思い出しても、意味なんてないのに。
なぜか雨を見ると、その光景が頭のなかを流れていく。
戻らない幸せを想ったって……かえってなんてこないのに。
「………っはぁ」
気付けばろくに息継ぎもせずに生徒玄関まで走っていた。
運動は誰より苦手なのに、無意識に全力でここまで来ていたあたしは、下駄箱の隅に手をついてへたりこむ。
脚が痛い。
息が苦しい。
喉が痛い。
鼓動が早い。
だけど、胸が一番イタイ。