千尋くん、千尋くん
放課後の生徒玄関。
雨音だけが響く一階。
そこに誰もいないのは幸いだった。
「うぅっ……うぇ……っ」
どんな音も外の雨がかきけしてくれる。
どんなに泣いても、どんなに不細工な顔でも。
見てる人は誰もいない。
だったら、もう溢れださせてしまおう。
だって、あたしのそばにはもう……安心して寄りかからせてくれるあの暖かい胸はない。
ぎゅっと安心させてくれる腕も、落ち着く爽やかな匂いも、追いかける背中も……。
もう、そばにはない。
だから……1人でこの気持ちをどうにかしなきゃ。
きっと、またあたしは壊れてしまう。