千尋くん、千尋くん
「な、なに……?」
慌ててその被さった何かを掴んで、視界をクリアにする。
いきなりのことに驚きながらも、掴んだそれを確認すると。
……ブレザー?
確かにそれはうちの高校のである、紺色のブレザー。
しかも、あたしが着ているのより少し大きい、男子用。
何がどーなってこんなものが、頭の上から降ってきたのか。
グリンと顔を上にあげて確認する。
そして、後ろに反り返るくらい首をひねったあたしの視界に写るもの。
「…………」
「…………」
「…………ゆ、め?」
「……現実だろうね、たぶん」
久しぶりに聞いたその声に、じわりと止まったはずの涙が溢れだしてきた。