千尋くん、千尋くん
「なんで俺に声かけてくれなかったの? 図書室来るならついていったのに」
そう、この通り暇な委員会活動のため、最近はよく委員会の日は千尋くんについてきてもらってる。
でも、今日は……。
「3組に、千尋くん……呼びに行ったら、女の子とどこか行ったよって3組の人が……だから、じゃ、じゃましないほうがいいかなって」
冷静を装って言ったつもりだけど、何だかうまく話せなくて。
いつの間にかカウンターを挟んで目の前にいる千尋くんと、目を合わせられない。
「あー……その時来てたんだ」
「しょ、しょうがないよね。千尋くんモテるしっ、カッコいいし、優しいし……」
「本当にしょうがないと思ってる?」
「思って、る……」
「じゃあなんで泣いてるの?」
千尋くんに言われて気づく。
ほっぺを温かい何かが伝って、そのままカウンターに小さな水溜まりを作った。