千尋くん、千尋くん
口にはしない記念日
その日はお昼から雨が降っていた。
いつもどおり授業を受けて、いつもどおり掃除をして、いつもどおりの放課後を迎える。
「あるみ、バイバーイ!」
「ヒメちゃん、明日ね」
教室から出ていくヒメちゃんに手を振って、自分も机の横にかけてある鞄を持ち上げる。
「さて……」
どうしたものか。
教室の窓から、雨が降っている曇り空の外を眺めて途方にくれてみる。
「……傘、忘れちゃった」