千尋くん、千尋くん






今日はスケットのあたしたちが来るということは、一之瀬くんが電話で話をつけておいてくれたらしく。




千尋くんとあたしが中に入ると、番台にいたここの銭湯の責任者らしいおばあちゃんがすぐに声をかけてくれた。





「あらあら、もしかしてあなたたちが、いっちゃん(一之瀬)の言ってたすけっとさん?」




にこっと可愛く笑うおばあちゃん。




すごく優しそうだ。






「はい、宇治橋千尋です。一之瀬の代わりに来ました」




あたしがおばあちゃんの雰囲気に気をとられている間にも、しっかりものの千尋くんは挨拶をしている。




あ、あたしもしなきゃ……っ。




「ぇと……羽咲あるみ、です。今日は、スケットのスケットで来ました……っ」




「すけっとのすけっと? ごめんねぇ、おばあちゃん横文字に弱くて……」




「あ、いや……っ、ご、ごめんなさいっ」






なんか分かんないけど、謝っちゃった。




こっちは人見知りでちょっとパニックなのに、隣の千尋くんはおかしそうに笑っている。





こっ、こら! こっちは真剣なんだぞ!






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