千尋くん、千尋くん
それじゃ足りないよ
「なんか、腹へったな」
「もうお昼だもんね」
12時近くになって、ようやく目を覚ました侵入者……じゃなかった。
改め、あたしの彼氏である宇治橋千尋(ウジバシ チヒロ)くん。
せっかくの日曜日の朝なのに、彼のせいでゆっくりすることができなかったあたしは、とりあえずパジャマから部屋着に着替えて宿題をやっていた。
そして、今に至る。
「お母さんはお昼前に出かけちゃったみたいだし、あたし何か作ってくるよ」
料理は得意でもないが、苦手でもない。
普通の人並みにはできるはずだ。
「ん。別にてきとーでいいから」
いまだにベッドに寝転がったままの千尋くんは、近くに置いてあった携帯を開くと、視線も向けずにそう言った。
嘘つけ。
本当に適当に作ったら怒るじゃないか、と念を送りながらも部屋を出る。