レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
もう、会うこともないし、会う必要もない。

泉もきっと、それだけの気持ち。


その証拠に振ってから、早1ヶ月。
何の連絡もない。


だから、いいんだ。



「伊織?」


「え?」


俺はぼーっと考えすぎて、りさがシャワーから出たことすら気付いてなかった。


「どうしたの?」


「いや、何も」


「…そう?伊織」


「……ん?」


俺は造った笑顔を張りつけてりさを見る。
それにりさは少し眉をしかめて、言った。


「今日は私、帰るわ」


俺はすぐに理解出来ず、ぽかんと口を開けてしまった。


「だから、もう出るわ」


「…平気なの?」


「……ええ、伊織のおかげで私しばらく生きていけそうよ」


「…そう、それならよかった」


今度は心からの笑顔を見せて、りさに言ったんだ。


それから俺は一人で部屋に泊まった。
りさは家に連絡し、迎えを寄越していた。
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