レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
さっきまでの柔らかい雰囲気を消して、母親は顔を歪めている。
「……父さんは…生きてるわよ」
「なんだ、いないのかと思ったじゃんか」
「……でも、いないと同じよ」
「……え?」
「女の人のとこにいるの」
「……………」
「伊織は気にしなくていいわ」
「…離婚は?」
母親は俺から視線を落とすと、お皿を洗っている。
それから一言。
「…気にしなくていい」
それって。
離婚はしてないってこと?
「してねえの?!」
思わず声を荒げると、母親は悲しそうな顔で黙りこんだ。
「……………」
母親は何も、言わない。
「……今日は、折角伊織と再会した記念の日よ?
その話はまた今度にしましょう」
無理に笑顔を作って俺を諭すように話す。
「………わかった」
何か。
事情があるのかな…。
だけど、母親の気持ちとは裏腹に俺の中での父親への嫌悪感は日増しに強くなって行った。
俺が父親を大嫌いになったのは、この日から数ヶ月経ったある日のことだった。
「……父さんは…生きてるわよ」
「なんだ、いないのかと思ったじゃんか」
「……でも、いないと同じよ」
「……え?」
「女の人のとこにいるの」
「……………」
「伊織は気にしなくていいわ」
「…離婚は?」
母親は俺から視線を落とすと、お皿を洗っている。
それから一言。
「…気にしなくていい」
それって。
離婚はしてないってこと?
「してねえの?!」
思わず声を荒げると、母親は悲しそうな顔で黙りこんだ。
「……………」
母親は何も、言わない。
「……今日は、折角伊織と再会した記念の日よ?
その話はまた今度にしましょう」
無理に笑顔を作って俺を諭すように話す。
「………わかった」
何か。
事情があるのかな…。
だけど、母親の気持ちとは裏腹に俺の中での父親への嫌悪感は日増しに強くなって行った。
俺が父親を大嫌いになったのは、この日から数ヶ月経ったある日のことだった。