レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
それから、毎日。
母親と俺は、喫茶店を切り盛りしながらも楽しく過ごした。


店が休みの日は決まって二人で出かける。
ご飯は何にするかって悩みながら買い物する時間が、何より幸せだった。


憧れていた、平凡だけど愛の溢れた親子。


学校帰り。
そんな親子を見ては、いつも胸が苦しくなった。



どうして俺の母さんは俺を捨てたの?

どうして?

そんな気持ちばかり、俺を支配した。


だけど、今はその親子になれている。
唯一無二の、その存在に。



これほど幸せだと思ったことはない。

母親と過ごす時間はキラキラ輝いていた。


どう頑張っても、母親の作る玉子サンドの味にならなくて。
それを諦めてからは、母親の玉子サンドを食べることが俺の日課になっていた。


「伊織、学校は行かないの?」


店を閉めてから、母親が夕飯を作りながら俺に言った。
喫茶店だから、閉まるのも早くて七時には閉店する。


それからお店の片付けやら、全て終わった後に少し遅めの夕飯を食べる。
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