レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
「しょうがないって…」


そんな言葉で済ませる次元をとうにこえている。

母親の笑うその顔が自虐的に見えてしまう。


「あの人のことは、大丈夫よ。伊織が心配することはないの。
だから、もう首を突っ込まなくていいのよ」


「でも」


「伊織、お願いだから、もう殴ったりなんてしないで…?」


「………」

寂しげな瞳で、そう呟く母親に俺は頷くしか出来なかった。


「ほら、もう寝なさい。
母さん、まだやらなきゃならないから」

俺の背中をぐいっと押すと、階段まで誘導した。

それに曖昧に笑ってから、俺は釈然としないまま

「おやすみ」

そう、告げてから部屋に向かった。


後ろからおやすみなさいと聞こえたが、振り向かなかった。



部屋に戻って、すんなり眠れたわけじゃなかったけど、好きな音楽をずっとかけ続けていたら、いつの間にか気持ちも落ち着いて眠りについていた。
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