レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
さっき。

金を寄越せと脅しに来た男と、どうしてそうなるの?
わけもわからず、涙が溢れた。


ウォークマンを充電器に差し込んで、イヤホンをつけた俺は音楽を流す。

あの音が聞こえないぐらいの大音量で。


この日を境に。



俺の生活は急変してしまった。




翌日。
大音量でかけていたイヤホンを外されて、静寂が訪れたと思いきや母親の声が間近で聞こえた。


「こらっ!寝坊助!」

ぱちっと目を開けて、俺は思わず母親を見た。


いつもと変わらない笑顔。



だけど。



俺の中では、何かが違う。
昨日の母親とは何かが。


ふいっと視線を反らして、ぶっきらぼうに答えた。

「……今、起きる」


「ご飯、出来てるわよ」

そんな俺の変化に気付いていないのか、母親はいつもの様にそう言った。

それから立ち上がって、そのまま階段を降りて部屋を後にする。


そんな母親の後ろ姿を忌々しく見てしまう。

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