レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
その言葉に弾けたように彼女が笑った。

何で笑ったのか、理解出来なくて、笑い転げる女を訝しげに見つめた。


「あはは、ごめんね。
君、売り初めてでしょ」


「えっ」

何で、わかったんだ…?


そんな顔を多分、もろにしていたんだと思う。
彼女はなお、笑い続けた。


「いやね、普通ありがとうなんてまじまじ言わないよ。
それに値段設定もおかしいし、君ならもっといけるのに。
ほら!」


くしゃっと、強引に渡されたのは壱万円二枚。
合計、四枚が今手の中にある。


「こ、んな…」


こんなにいらない。
そう、続けようとしたのを遮られる。


「売るなら売るで、プライドは持ちなよ。
これ、アドバイス」


「…………プライド」


「そ。安売りは自分の価値下げるから」





自分の価値。




最早、そんなもの俺にあるのだろうか。

よくわからない。



俺。

今、何でここにいるの?

よく。





わからない。



いらないと。

言われた俺に価値なんて。
< 295 / 472 >

この作品をシェア

pagetop