レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
ゆっくり私は場内に戻って、伊織の様子を遠くから伺いながら近付いた。


まあ、当たり前っちゃ当たり前だけど私を全く気にしてないわけで。


そうとわかったら、あまりにも意識しすぎてる私は馬鹿みたく思えてずんずんと前に進んだ。
席に戻っても、こっちを振り返ることすらしないのは至極当然なわけで。


薄暗くなる場内で、気付いたらずっと伊織を見てることに気付いたのは予告の音が大きかったから。


予想外の大きさに、少し驚きながら私は視線を伊織からスクリーンにやっとうつした。


映画はやっぱり、とても陳腐で。
愛を語るほど恋愛をしてきたわけでもないくせに、ツラツラ出てくる愛の台詞にどんどん白けていった。


燃えているとこんな台詞も輝いて見えるのだろうか。


じっと、スクリーンの中で抱き合う二人を見つめてそう感じてしまう。





我ながら冷めている16歳だ。
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