レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
「…どういう…」


それは、一体どういう意味?
そう、言いたいのに。

喉が渇いて声が出ない。


「……伊織…。
自分から不幸せになる道ばかりいくからな。
そこだけは変わってない。
今も、昔も」


「………」


「久しぶりに会った伊織、死んだような瞳してる」


「………」


「千里に聞いた」


「……何を」


「……千里が代わりに車を持って帰ったこと」


ああ。
あれか。


「…泣く、だなんて人間的な部分あったんだなって」

眉を下げて言う美佳に、俺は軽く笑う。

「人をサイボーグかなんかみたいに」


「だって、そうだったでしょ?」


「……っ…」


「母親が死んだ時にあんたは泣きもせず、復讐に燃えたのよ。
大事だと…思ってたんでしょ?」


「…………」


お願い。
もう、傷を抉らないで。


耳を塞いでしまいたい。


苦しくなって、顔をしかめた俺に。




「その、泉って子が伊織をそうさせたんでしょ?」

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