レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
映画館を出た後、腕を組む女を伊織はタクシーに乗せると、女だけ乗せてその車を見送った。



そこで私は見た。


タクシーがなくなった後の彼の冷たい眼差しを。



さっき思った恋人同士のレッテルは、やはり取りのぞいた方がよさそうだった。



伊織はタクシーの走り去った方と反対に向かっていた。


慌てて私は後を追う。

どうしたらいい?

どうしたらいいんだ?




伊織を引き止める言葉が思い浮かばない。




だけど。

きっと!


ここで声をかけなければ一生後悔する。
そう、思った私は一大決心をして声をかけた。



「伊織…さん!」


さん?くん?
伊織としか呼んでなかった私は、その一人称に少し違和感を感じる。

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