レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
暫く、ベンチに座って気持ちを落ち着かせてから俺は別のスーパーで買い物をして帰宅した。


いつもより一時間も遅い。
帰った俺を鈴恵さんが心配そうに見つめる。


「……鈴恵さん、ドーナツは?」


「………あるわよ?あっち行く?」


「……うん」


何も聞かれないことに、安堵した俺は返事をして室内に入る。
入ったと同時に、のりやしょうや、あんが俺に気付いて声をかける。


「あっ、にぃに」


「ドーナツあるよ!」


「にぃに、おかえりー」

口々に言うこいつらに、思わず口元がゆるむ。


「ただいま、いい子にしてたか?」


「してたよー?」


「あ、今日ね、ねぇね来てた」

しょうが思い出したように言う。
それを俺が聞き返す。

「ねぇね?」


「うん、ねぇね」


「ねぇね、優しかったねー」


「ねぇねは何してたの?」

俺がそう訪ねると、今度はのりが答える。


「まあまとお話してた」


「鈴恵さんと?」


「うん」


「そっか、あ、俺にもドーナツちょうだい」


「いーよ!これ俺たちが作ったんだよ」


自慢するようにお世辞にも綺麗とは言えない形のドーナツを俺に渡す。
それを受け取って一口頬張った。


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