レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
名前を呼ばれた伊織は、肩を揺らしながらゆっくりと振り返る。

その顔は全く笑ってなくて、声をかけたことを早々に後悔する私。



「……何?」


低く、威嚇するような声に怯みそうになる。
でも、キッと睨みつけるように伊織を見ると私は記者魂なめんな!って思いながら言葉を発した。



「伊織さん、今日の仕事終わりですか?」

目を丸くする伊織。

その問いに明らかに不信感を露にした伊織が、私を見据える。
ここで怯んではダメ。


ぐっと腹に力を入れてから伊織を見つめ返した。



「レンタル彼氏について聞きたいんです」





“レンタル彼氏”




その単語が出た途端、光をなくした様な瞳を見せた伊織に陰を見つけた。




黙っていた伊織は表情を変えず、私に聞き返した。



「何の話?」




これは。
しらばっくれようとしてるのだろうか。
< 39 / 472 >

この作品をシェア

pagetop