レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
少し馬鹿にされた様に感じた私は苛立つ気持ちを抑えて、伊織にまた噛み付く。



「全部知ってます、伊織さんはSランクの超高い契約金なことも」


私は伊織を見ずにペラペラと喋る。
見たら、臆づいて言えそうになかったからだ。


「伊織は売れっ子で、人気ナンバーワンだと」


少しでたらめを混ぜながら私は続ける。


「さっきも仕事帰りですよね、明らかに帰った後の目違いまし…」


そこまで言うと、伊織に強く腕を掴まれて細い路地に引きずり込まれていた。


咄嗟のことで叫ぶことすら出来ずに、ただ唖然として連れてかれる私。



危機能力というものは私には備えつけられてなかったんだ。




合掌。



今にでも殴られそうなほど怖い顔をした伊織を目の前にして私は心の中で、そう呟いた。
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