レンタル彼氏 Ⅰ【完結】
「時間余ったね」


千里を見て私は言った。

「ああ、な」


「お腹は?今日付き合わせたし奢るよ?」


「あんま空いてないな」


「えー?じゃあ、ケーキ食べるの付き合って!」


「………」


何か言いたげな千里の腕を無理矢理引っ張って、人気のスイーツショップに入った。


店員に案内されて、可愛い店内に誘導される。
ピンクのテーブルクロスや、アンティーク調の椅子が、いかにも女子が好きそうな感じ。

「食べないなら何か飲みなよ」


「あーじゃあブラック」


「えー?あんな苦いのよく飲めんね」


「いや、あまり飲まないけど……店内甘ったるすぎるから」


確かに、ケーキやチョコの匂いが店内に充満してるけど…。
これは幸せな香りよね?

店員を呼ぶと、ケーキをいくつか頼んでから、千里のコーヒーを頼んだ。


注文したことで、満足していると千里が眉をひそめて口を開いた。

「………なあ」


「ん?」


少し、様子がおかしい千里に首をかしげる。


「………伊織の彼女知ってる?」



………………は?

伊織の彼女なんて、不特定多数いるよね?
だって、それが職業だし?
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